とことんバッハ
2002 7.12(金)19:00
石川県立音楽堂邦楽ホール

指揮
ニコラス・クレーマー

演奏
OEKメンバーによるバッハ特別編成合唱団


プログラム

音楽の捧げもの BWV1079より
フルート、ヴァイオリンと通奏低音のための、王の主題に基づくトリオ

管弦楽組曲 代2番 ロ短調 BWV1067

カンタータ第182番「天の王よ、よくぞ来ませり」BWV182
合唱 バッハ・カンタータ合唱団



ニコラス・クレーマー氏サイン


いろいろ忙しかったのと、
さすがにアタマが182番から離れている事で、
はるか彼方の記憶を呼び起こすように書いているワタシ・・・・。

カンタータ182番は、バッハが29歳、ワイマール時代の頃の作品。
4週間ごとにカンタータを作曲するようになった第1作、復活祭の‘枝の日曜日’のための曲。

第1曲は、イエスがロバに乗ってエルサレムに入城する様子を、
第2曲の合唱は民衆がよろこびをもって迎える様子を表します。
ダカーポ形式で初めて書かれた曲との事。
ソプラノの出だしが、はじめっから難関で苦労していました。
アルトはソプラソを引き継ぐように出る事が多く、一緒にドキドキしていました。
ひとつのメロディをずれながら歌っていても、必ず時々の主役パートがあり、
今は自分たちだ、今はウラだ、と自覚しながら歌っているのがバッハの面白く難しいところ。
そして、みんなが揃う所が、作曲者が1番伝えたいところ。Komm herein!

第3〜6番はソロで、イエスの受難を歌います。
今まで歌ってきたカンタータでは、真ん中にどんっ、と独立したソロの曲が連続3曲も入って、
合唱がヒマで座っても良い曲はありませんでした。楽ちんだけど寂しい・・・。
(合唱の中にソロが入ったり、ソロにオブリガートがついたりする事が多かったので。)

第7曲は再び合唱。イエスが我々のために受けた受難こそが、我々の喜びだと歌います。
ソプラノ以外の最難関曲。
ですが、私ににとってはこの曲が1番好きでした。
ソプラノは拡大フーガでけっこう目立ち、
他パートは、難しいのにどちらかというと淡々と歌うよう求められるのですが、
厳しい詞ではあるけど、ひとつひとつのメロディが美しかった。今でもふと、浮かんできます。
定演の栗山先生の仕上げ方(取り扱い方?)と、この曲が1番違っていたように思います。
クレーマー氏、速かった・・・。
(本番、突如口がまわらなくなったところが・・・ショック。)

第8曲はまたダカーポ形式。3/8拍子で舞い踊るように信仰の喜びを歌います。
ト長調、上にのぼっていくメロディラインで、そのまんま天に昇る曲なのです。
ひたすら喜びを持って歌うよう求められましたが、
本番、指揮者はホントに歌い踊っていました。実に幸せそう。
ああ、でもLieben(愛)とLeiden(苦しみ)の差がどっかいっちゃたような・・・。



前日リハ。
楽しんで楽しんでBACHに取り組んでいた
クレーマー氏。


バリトンソロの野本立人氏(今回、突然なりゆきで我々のヴォイトレまでやってくださった。)は、
クレーマー氏のまとめ方を、‘軽妙なイギリス風BACH’と表現されていました。
「だったら日本人による日本人風BACHと言うのも、アリなんではと思えてきた。」なんて言い方も。

はっきり出ていたのはソロや第7曲で、端的には‘速い’。
栗山文昭先生は、受難を歌うソロや第7曲などは、もっと速度,ダイナミクスなどを
かっちりと表現していたしていたように思います。本番では
(&第7曲は、栗山先生はソプラノをもっと目立たせていた。)
この曲に限って言えば(他は知らない)、曲の内容からしてクレーマー氏風でも素敵なのでは・・・
歌っていて幸せな気分だったので、それでgoodなのでは・・・なんて思いますが。
とにかく同じ182番で違う楽しみ方をさせていただき、私たちにとって2度おいしい曲になりました。



どんなに指揮者,指導者がかわっても、根本はそうそう変わるものではない。
それが今回改めて身にしみたと思う。
もっともっと‘声の引き出し’の中身を増やさねば。

グリーンウッド・ハーモニーは定演で歌ったメンバーが今回そろわず、
アルト以外はずいぶんエキストラの助けを受け、バッハ・カンタータ合唱団という団体となりました。
主催がOEKという事で、勝手が違って一体誰が合唱団の取りまとめをしているのかあいまいになり、
運営上、か〜な〜り〜混乱しておりました。
そして1番伝えたいものは何かも。
いろんな方々に、ご迷惑をおかけしました。
(いや、今思うに企画された時、いろんな人達とこの機会を大切にしたい、
という意図がはじめからあったと思う・・・まあ今さらいいや。)
本番ではソプラノの人数がぎりぎり決まってパワーアップし、アルトが沈んでしまいました。
指揮者が「アルトもっと!」とアピールしているのがわかるんですが、答えきれない。
ムリにがんばっちゃうと、もともと‘声が揃わない’とおしかりを受けているウチのアルトの欠点が・・・。
(揃えなくちゃ、という意識がハッキリ言ってあまりなかったような・・・課題です、ハイ!)

いろいろ思う事はあるけれど、‘一体自分は何のために歌うのか’から、考えたいこれからなのです。



クレーマー氏と出演者で
カフェ・コンチェルトで打ち上げ。


ニコラス・クレーマー氏 バリトン・ソロ 野本立人さん(左) アルト・ソロ 中巻寛子さん(左)